「言っておきたいことがあるの」
妻はそう切り出した。
「あなたをずっと愛してた」
真実の愛などあるはずがない。信じられるのはお金だけ。結婚は経済的な契約関係でしかない。そういう同意のもとで人生を共にすることにしたんだろう。最も近しいビジネスパートナーとしての関係を生涯をかけて構築してきたというのに、ここにきて一番重要なものが金ではなかったと言うのか。なんという裏切りだ。真実の愛（と偽られたもの）を裏切るよりも遙かに罪深い行為であることを君は知らないとでもいうのか。いまにも息を引き取ろうとしている私に、あまりに残酷だとは思わないのか。ところで私は妻を愛していたのだろうか。愛とはなんだ？あー、くそっ、時間がない。もう考える時間がない。あー。何という終りだ。
