Wakeupalicedear!

Shortest stories

人生論

さあ、一歩を踏み出せ。

人間の可能性は無限だって本気でそう思ってるの。 どっちの方向に足を踏み出すかは360度しかないのに。 しかも右足か左足か。結局同じことだけど。 この大地には私たちのこれからが書いてあるけど、 一足飛びには読めなくて、 歩きながら辿るしかなくて、…

これほどの幸せがこの世にあるなんて

「ああ、ほんとうに幸せな人生ね。これほどの幸せがこの世にあるなんて」 「そうだね。いろいろ辛いこともあったけれど、やっと、ね」 「でも・・・」 「やっぱり、気がかりなんだね」 「うん。あの子の無邪気な笑顔を見ているとね」 「いつ話すべきか・・・…

もう一歩前にお進みください。

暗いトンネルの中で迷っているとき、一筋の光が見えた。 そのとき、こんなメッセージが。 「もう一歩前にお進みください」 僕は、この世に生まれ落ちた。 哺乳瓶を口にしながら床に這いつくばっているときに、倒れた母親の姿が見えた。 そのとき、こんなメッ…

あなたの人生乗り換え案内

それでは、始めましょう。 あなたが、あなたの人生において、現在いる場所はここです。 ちょっと駅からは遠いですね。しかもかなり入り組んだ場所にいる。 まずは駅までは徒歩しかありません。がんばって歩きましょうね。 ここで決めるのは最寄り駅から目的…

猟師の流儀

一歩、一歩、間合いを詰めていく。 瞬きの音さえも憚られる静寂。 息を殺す。 一発で仕留めなければならない。 急所を外すと泣き喚くからだ。 傷んだ獲物を仲間が助けに現れることはなく、ただ目を閉じて物陰に身を潜める。 自分のことでなければ構わない。 …

地球は何かの地図である

地球は、何か本当のものを歩くための立体的な地図でしかありません。 道に迷わないように、いま自分がどこにいるのかを確認するための地図です。 どこに向かっているかって? 決まっています。 誰ひとり迷子にならず、確実にそこに行けるのですから。

決めて

人生は、言うまでもなく、選択で成り立っています。 でも、わたし、優柔不断で、何も決められません。 怖いんです。後で後悔するのが(後でするから後悔だけど)。 だから、ネットのみなさんにこれまでずっと決めてもらってきました。 今日着る服とか、付き合…

一日限定

ある男が生まれてすぐに意識不明に陥り、 病院のベッドに寝かされたまま成長し、 時が過ぎ、 老人になり、 ある日、ふと目を開けた。 ずっと天井を見つめていた。 誰も気づかなかった。 翌日、死んだ。 そこで僕は考えるのだ。 彼は目を覚ますべきだったのか…

両親の祈り

両親は生まれたばかりの娘の幸せを祈った。 「辛い思いをすることなく一生過ごせますように」 娘は翌日死んだ。

ありがちな遅刻の言い訳

全部、虚構ということさ。お金も、法律も、宗教も、ネットも、全部がつくりもの。かたちのないもの。あるということにしているだけの約束事。みんなで生きているんだという幻想を支えるための道具。見えるものも、聞こえるものも全て、言葉さえも。 石を手に…

何を今さら

私は一生涯、骨を粉にして働き続けた。 懸命に生きたんだ。 目をつむった最後の瞬間に、神らしき声が聞こえた。 「遊びの時間は終わりだ」。 今さら、それはないだろ。

毎日届く封筒

僕に毎日、封筒が届く。 一日も欠かすことなく。 中には、鍵が一個だけ入っている。 いろんな色だし、いろんな形だ。 もちろん何の鍵だかわからない。 何も開けることができない。 何も開けることができないまま、 鍵だけがたまっていく。 そんな感じの毎日…

3日間

何事にも律儀な彼は今時珍しく一つの会社を定年まで勤め上げた。 最後は会長にまで登りつめ、巨万の富を築いたのにも関わらず、運転者付きのリムジンに乗ったりするのは全く趣味ではなかった。 彼の使っている乗り換えアプリは毎日の電車の遅れを計算する機…

砂場のルール

男の子が泣いている。体の大きい友達に一方的にやられたのだ。そこに、変な服を着たサングラス男が現れ、いじめた友達の頭を思いっきり殴りつけた。母親が悲鳴を上げ、まわりにいた大人が男を取り押さえた。「大人が子供のたわいもないケンカに口出ししない…

父のように

前々からうっすら気付いてはいたんです。年々、気味の悪いくらいに似てきていると。私の父に。私の父は50になる年に、胃がんで亡くなりました。随分と苦しみました。私は父のことを可哀想だと思うよりも少し前に、こう思いました。「あんなふうには死にた…

レシピの通りに

あらそうですの? うちは子育ての苦労なんて全くございませんわよ。 協会から送られてきますレシピのとおりにするだけですから。 食事はどんなメニューにするか。 食事中の話のテーマは。 何をいつ、飲ませるのか。 今日のテレビは見せていいかどうか。 どの…

自分の人生が小説なら「あとがき」だけ読んで感想文を提出しちゃいたいのに

かみさま、このままあんまりおなじ毎日がつづくようでしたら、 いっそのこと、とばし読みたいかんじです。 あなたはわたしがどうなるか、さいごまでもう書いてしまっているんでしょう。 でしたら、だらだら書きちらすようなたいくつな日々は、 とちゅうでな…

ペースメーカー

彼とは同期だった。 「同期は蹴落とすものだよ」 さすがに先輩や上司からはそんなふうには教わらなかったが、 みんな心の底ではそう思っている。 職場では敬語で話す。 彼を除いては。 失敗を押し付けられた日には卑劣な上司を罵り合った。 難しい商談をまと…

初めての台本

今日、息子に初めての台本が来た。これまで息子は自由にできた。これからはそうもいかないが、将来を担う人間として認められた証だ。親としては嬉しいかぎりだ。先に読んだ息子が言う。「パパって今回分で死ぬんだね。」