会社の昼休み。
屋上に行って、気分を変えよう。
さっきもバカにされた。
エクセルも使えないんですか?
どうして経理にいるんですか?
私も聞きたい。
私が聞きたい。
缶コーヒーが飲みたい。
ジョージア、コクのブラックだ。
140円だ。
小銭入れにちょうど入っている。
40円を先に入れる。
消費税が上がってからはかなりめんどくさい。
なんせ四つだ。
すとんすとんすとんすとん。
手ごたえのある音だ。
そして100円。
からん。
手ごたえのない音だ。
なんでだ。
100円のほうが軽いのか、と思ったら、
返却口に戻っている。
手にとってみると昭和33年製だ。
わたしと同い年だ。
奇遇だな、こんなところで。
旧友にあったような気分だ。
もういちど入れてみる。
からん
もういちど。
からん
何度やっても同じことなんだろう。
涙が出てきた。
何度やっても同じなんだ。
もう使えない、
存在価値のまるでない100円硬貨を握りしめ、
私はゆっくりとフェンスを越え、
我が身を虚空に投げ入れた。
からん。