「やめてよ」
不妊症でした。ほしいのに赤ちゃんができなくて、ずっと悩んでいました。もうだめかなと思っていた時に、やっとできました。生まれてきてくれてありがとう。わたしは心からそう思いました、なのに...
最初は気のせいだと思いました。わたし、独り言でも言っちゃってたのかな?
でも、また聞こえたのです。
「なんで産んだの?」
他には誰もいません。一人きりになったときに抱っこしようと、待っていたのですから、間違いありません。だから、この子です。
彼女は目を閉じました。そして二度と開けることはありませんでした。
わたしは意地になっていたのかもしれません。そんなことがあるはずない。またもう一度。今度はきっと。
「また?」
わたしはもう驚きません。言うべきことは言わせてもらう。
「そうよ、何が不満なの?あなたが生まれたくなくても、わたしには子供をもつ権利があるのよ。それを邪魔しないでくれるかな」
「私にはわかるのよ。自分が恐ろしく不幸な人生を送ることが。だって見てきたんだもの、この目で。あなたにはわかってるでしょ。だって【自分】の人生なんだから。それとも、またこんなろくでもない人生を生きたいって言うの?自分の胸に問いかけてみてよ」
そう言って、赤ん坊のわたしは、ゆっくりと目を閉じたのです。