読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

過去の僕も未来の僕もいまの僕を決められない

明日の僕が目の前に現れた。

「悪いがお前には死んでもらう」

訳が分からない。明日の僕なんだから、死にたいんだったら明日死ねばいいだろうに。

「それは困る。痛いのは嫌なんだ。お前が死ねば、僕は痛みもなく、ただ消滅する」

激しい戦いが始まった。僕は特殊部隊の現役隊員だ。あらゆる殺しのテクニックを知っている。だが、明日の僕も同じ能力だからそうそう簡単に勝負がつくはずがない。

そこに別の僕が現れた。昨日の僕だ。

「僕には輝かしい未来が待っているはずなんだ。お前なんかに殺させてたまるか」

昨日の僕と明日の僕の死闘が始まる。今日の僕は昨日の僕に加勢し、明日の僕を一基に追いつめるが・・・

日付を跨いでしまった。

僕が「明日の僕」になってしまったし、「昨日の僕」はさっきまで「今日の僕」だった僕になってしまった。だがそのおかげで三つ巴でややこしくなっていたのが一対一に戻った。

僕は自殺願望はないし、もう昨日の僕(つまりさっきまで僕だった僕)を殺さなくてもいいのだが、「今日の僕」になった「昨日の僕」は、この僕のことを自殺願望のある未来の僕だと思い込んでいるので、相変わらず僕のことを消そうとしてくる。

僕が「僕が消えれば君の未来も消えるんだぞ」と叫ぶと、

「何を言ってるんだ。お前が消えれば、自殺願望のない新しい僕が生まれるんだ」と反論する。

そこへ自殺願望のない別の未来からの僕が現れる。

「俺がその自殺願望のない明日の僕だ。お前のせいでこんなことになっているんだ。早く消えろ」とせっかく一対一になっていた対決に参戦する。そして、別の未来からも次から次へと自殺願望のない僕が現れる。一個隊を組織するぐらいの数だ。ほぼ同時に別の一団が現れる。自殺願望のあるタイプの明日の僕たちだ。数は全く拮抗している。余っているのは僕だ。

「お前はどっちだ?」と両軍から左右ステレオで声が響く。

「僕はどっちでもいい。ただ昨日に戻りたいだけだ」

「昨日はもう過ぎ去った。お前はもう昨日のお前ではないし、明日のお前もお前ではない。今日のお前がどう思うかが大事なんだ」

「そうだよな」と僕は首にナイフをあてる。明日の自分が言う程度のことはもう解っているんだ、余計なお世話だ。

明日と昨日の僕の両軍が跡形もなく消えた。明日の自分でもなく、昨日の自分でもなく、今この瞬間の僕こそが僕の運命を決める。この状況では誰も介入する余地がない。だから全員消えたのだ。

問題は、このままずっとナイフを首にあてたまま、明日を迎え続けるのかどうかだ。