Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

『ラヴソング』も『99.9』も『アイアムアヒーロー』も、ぜーんぶルールはただひとつ、『この屈辱を忘れるな』

とりあえず今週の『ラヴソング』、見どころの振り返りからいきますと、藤原さくらが福山雅治についてきてもらい、大手レコード会社部長のりょうに会って、吃音を気にされ、ちょっと落ち込んだ感じの帰り道、二人並んで歩くところにブラバンの練習を見る子どもを福山がよけ、寄ってくる女子二人をよけ、突っ立つ木をよけ、もう一本よけ、こんど藤原さくらのほうにもボールが転がってきて、二人の間を部活の人たちが走り抜け、アディダスのリュックのカップルも通り抜け、ベビーカーが割り込み。

 

なんでこんなことをわざわざやっているかというと、これは劇作家・演出家の平田オリザのワークショップの練習方法で、わざと邪魔を入れてセリフを自然にするためらしい。カプチーノやカフェラテのカップを持たせるのもそう。持つのは何だっていいんだけど。演出の西谷弘織田裕二主演作で注目されたので本広克行監督つながりか。本広監督が平田オリザに傾倒しているのは『幕が上がる』で世間に知られているし、水野美紀でもつながる。今週なぜかいい女度がアップしていた。ルックスが良すぎて美少女キャラだと誤解されるのが辛いと王道をあえて外れていたのは夏帆も同じか。

 

なんとか自然に見せようという努力が涙ぐましい。藤原さくらではなく、福山の演技の話だけど。

 

続くシーンで、飲み終わったカフェラテをゴミ箱に見事にシュートして成功する藤原さくらの傍らで一生懸命昔話をする福山にあんたもやればってずっとジェスチャーしてる彼女の手の動きと話を聞いていないのが明らかな目のやり方の見事さは見ないとわからないけど、今回それより主張したいのは、福山がテキトーにやって入んなくて、「もっかい!(もう一回の意味ね)」と言うんだけど、二回目のイントネーションが、一回目と100%同じ。これを彼女は意識せずにやっている。でもこれは意識してもなかなかそっくり同じにはならない。このあと「なんでだよ」「はいってない・・・もっかい」と3回もあるので、一回目と二回目が違う言い方だと3回とも違う言い方になるのでただのうざいやつになる。だから、一回目=二回目、トーンをさげて三回目。こうすればかわいいしつこさになる。そしてまた福山失敗したあとに、今度も一回目二回目と同じ言い方で「もっかい!」、その次は広島風こぶしを入れて「もっかい!」「もっかいだって」ともうやりたい放題。そして「根性!根性!・・・手首ですよ」「根性なんかないんですけど」そして驚くべき細さのウェストを披露しながらのバンザイで「なんか下さいよ、私が勝ったんで」「あー勝負だったのね」の微笑む福山でこのシーンふつう終わるところが、福山の背中越しに振り返って福山の雪見大福のような笑顔ではなく微笑みにぎりぎり届かないラインの直前まで微笑む藤原さくらのカットを入れている。これがなんともいえない自然さで、平田オリザのワークショップ方式の効果が出たのかどうか知らないけど、奇跡的。

 

そして福山雅治のスターのオーラとプライドを打ち砕こうともう一人刺客が送り込まれる。

ギタリストとして独り立ちできるほどの腕はなく、作曲の才能もそれほどない、あなたくらいのミュージシャンは掃いて捨てるくらいいると言い放つ女。

それは、りりぃ。『リップヴァンウィンクルの花嫁』での突然全裸になる怪演を思い出す。りょうを圧倒的に凌駕する迫力だし。

「佐野さくらの歌唱力は天賦の才能だったかもしれない。でも運が悪い子は一生運が悪いのよ。だってあなたと出会っちゃったんだもの」

しかも、最後の笑い声、「ほ!ほ!」ですよ。

 

これですよ、これ。

 

屈辱。

 

ようやく本題です。

 

今のドラマや映画はほとんどがこの「屈辱」でできているんじゃないか?

 

大泉洋の屈辱

 

アイアムアヒーロー』では漫画家のアシスタント。

新人賞受賞後10年たってどこにも辿り着かず、

そのコンプレックスで一人妄想を繰り広げるように。

しかし屈辱を晴らす前に世界そのものが大泉洋の一人妄想を遥かに超える現実を炸裂させてしまい、ZQNの頭を吹き飛ばすぐらいしか炸裂させるものがなくなってしまった。

そしてクライマックス、「ただのひでお(英雄✖)です」は屈辱が消えたわけじゃない、それだけで生きていけるわけでもないっていう境地に至るのだ。

ハードボイルドには屈辱が欠かせない。

 

榮倉奈々の屈辱

『99.9』

どうやって捜査していいかわからず(弁護士だし)

松潤に「助けてやろっか?」と言われ、

何よ自分だけでやるわと突っぱね(当然でしょう)、

でもうまくいかなくて。

屈辱だなんて言ってられない、依頼人を救うためには、

ってことで、やっと来たねと待ち構える松潤

松潤、憎まれ役なのか?

まさかね。

というよりも『図書館戦争』しかり、ジャニーズにからかわれて「何よ!」っていうパターンが定着している。北川景子との二強争いか。屈辱を力に変えて。

 

遠藤憲一の屈辱

ちょっと前の『真田丸

呼びつけておいて「今日は都合により会えぬ 明日に延期」と秀吉。

それでも秀吉に頭を下げざるをえない遠藤憲一

それは領地の民を守るため。

お前がこの屈辱を晴らせてくれと堺雅人に語る。

あの目で言われれば、たとえその気がなくても復讐してあげたくなる。

 

岡田将生の屈辱

『ゆとりですがなにか』では会社で後輩にパワハラで訴えられる。

5万円の和解金、しかも自宅謹慎を命じられる。

こういうふうに書くと真面目な話かと思うとそうでもないのだけれど、

めんどくさいのでとりあえずそういうことにしておくと、

その一方で、後輩はしたり顔で出勤し、

「あ、先輩。おつかれっす」

煮えくり返る腹を呑み込んで、岡田将生

「おはよう」

 

この屈辱を誰が晴らすのか?彼女の安藤サクラか、自称友達の柳楽優弥か?

 

柳楽優弥

「お前パワハラしたの?理不尽な発言で人格否定して後輩を精神的に追い込んだの?違うよね。なんで金払って会社休まなきゃなんねえの?後輩元気で働いてんのにさ」

 

東大11浪のチンピラが言っても何の説得力もないはずなのに、あるんだなこれが。それこそがクドカンマジック。

 

広瀬すずの屈辱

ちはやふる

『ゆとりですがなにか』の焼鳥屋の店員、矢本悠馬は『ちはやふる』では超いい役で、

最強クイーンの松岡茉優から一枚しか取れなかったってプチ人格崩壊しながらかぶりものキャラに寄り添いながらつぶやくシーン最高だし。

広瀬すずの屈辱?

彼女は屈してないから。

屈するわけないし。

 

ということで、日本のドラマを席捲する「屈辱」は、たぶんここから来てるんじゃない?みんなこれ見てるんじゃないの?このキャッチコピーも超強力だし、超おもしろいし、刷り込まれても仕方なくないっすか。

 

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