Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

僭越ながら『家族ノカタチ』について一言(ってみんな書いてるだろうな)

結婚式もあったし、パーティーばっかりやってるし、最終回お葬式で終わるし、今どき珍しくやたらと冠婚葬祭の多いドラマでしたね。

 

冠婚葬祭って不思議なもので、全部家族に関わることなのにどの漢字も家族を意味する「うかんむり」がついていないのですね。

 

そして、クライマックスは、婚と葬の合わせ技でした。お葬式の喪主挨拶でプロポーズをするという珍しいシーンを(寄り道しながら)見ていきます。

 

香取慎吾 「俺たちはたぶん一人でも充分な生き物なんだろうけど」

 

*香取君も実際そうでしょうけど、一人でも充分な生き物世界代表といえば、マット・デイモンをおいて他には考えられません。「人間には互いに助け合うという本能がある」というのは確かにそうかもしれないけど、それは本能が発動する場合の話で、理性や感情が先に立つ状況では皆さんご存知のようにわりとそうでもなく、火星でなくとも一人でやっていかないといけない状況は多々あり、そういう環境に慣れてくると一人でも平気になってくるのもみなさんもご存知の通り。

 

www.youtube.com

 

香取慎吾 「それでもせっかく出会えたんだから・・・僭越ながら、一人より二人になってみない?」

 

*火星なら何が何でも絶対そうでしょうけどね。

 

*「二人」のところが笑いかけている。「おれは何をやってるんだ?」という照れか、「なんだこのくさいセリフは?」という自虐か。両方かもしれません。

 

*せんえつ【僭越】身分や権限などを越えて、差し出がましいことをすること。(大辞林より)

 

いきものがかりのファーストアルバムは、『誠に僭越ながらファーストアルバムを拵えました』。『超いきものばかり』という最新ベストアルバムは、ひとりぼっちのマット・デイモンへのアンサーソングになっている。歌じゃないか。でも宇宙服だし。

 

www.youtube.com

 

微笑む風吹ジュン

 

*口の両端を少し下げながらの微笑みはこの人にしかうまくできない。すごい特殊テクニック。だって下手なセリフよりも「語る」ので。だからあえてセリフなし。「言っても伝わらない」を描くのではなく、「言わないと伝わらないこと」と、「言わなくても伝わること」の両方を一緒に描くところが、このドラマの真骨頂でした。

 

田中圭 「すっごい変化球来たな」

 

*といいながら左手の指で耳の下を掻く。すごく細かく、しかも同じくらい細かいまばたきを伴う。これ、よくやるので、癖か?田中圭、こういう視聴者目線のセリフはすごいうまいですよね。なので結構重宝され、あちこち登場するのでしょう。見せ球ストレート的な、いい人すぎるか真面目すぎる元カレ役が多いですが、今回は元ダンでステップアップでした。

 

水野美紀が「これってプロポーズ?」と、息子で、香取慎吾の異母兄弟、髙井彪我に聞いて、髙井君はそうだよと大きくうなずく

 

*そもそも父親の葬式の喪主挨拶で香取慎吾がプロポーズする決心をしてしまったのは髙井君に「ファイト!」と言われたからで、ここにきてはっきりしたのは、こうやってはっきりしない大人たちを陰で動かしてきたのは実は彼だったのです。香取慎吾が人情派に変わったのも親戚にたらい回しになりそうだった彼の面倒を自分が見ると言ってしまったからで、というか言わせたのであって、西田敏行との間をつないだのも彼で、ダメな母親を立ち直らせたのも彼で、香取慎吾が彼の面倒を見てやる姿に惚れたのが上野樹里で、髙井君は特に大したセリフはなくて、泣きそうな顔か嬉しそうな顔をしてるだけなんだけど、やっぱり家を動かしているのは、子どもなんだなってことです。子どもは生きていく場所を大人に作ってもらわないといけないんだけど大人がしっかりしないから自分でたくましくなるしかないという話です。大人が気づかないように。でも大人も大人で彼のことをちゃんと見てる。痛ましい事件が多い中、このドラマの当たり前な優しさが心に沁みます。「沁みる」とは「心」に「さんずいへん」。枯れた心に水を注ぐようなドラマ、いいですね。

 

水原希子 「でも、どストライクですね」

 

*今回は憎めないいい役もらいましたね。とても自然な笑顔をここで見せてます。間の取り方も自然です。ゴール前の上野樹里にクロスを入れるのは彼女です。アシストが彼女につきます。

 

水原希子 「花子さん、返事は?」

 

「え・・・えっとお・・・」

 

すー

 

*口から空気を吸う音。上野樹里のくせですね。元陸上部なのに腹式呼吸ができてないということは短距離専門だということがわかります。先週、川辺で香取慎吾を探して走るところではさりげない腰の重心の高さがかっこよかったです。

 

「す・・・それでは」

 

*「そ・・・それでは」では、学芸会になってしまいます。だから、「す」。ここは考えた芝居です。

 

*「は」の語尾のア音が強い。これは関西出身の特徴。

 

「こちらも」

 

*「ら」が強い。これは関西ではないです。ここまでくるとリアルにとっちらかってしまっているということでしょう。

 

「僭越ながら、よろこんで」

 

*「それではこちらも」(8文字)と字余りな感じでグダグダきといて、「せんえつながら」(7文字)、「よろこんで」(5文字)と、五七五のリズムでピシッと収める。で、次の喝采につなげることができるのです。

 

荒川良々 「バンザーイ」

 

*この人も貴重です。お葬式中の泣きっぷりも見事。このコントラストで「お葬式中のプロポーズ」というSFが大いに救われた気がします。この人の存在自体が日常の中の非日常なので、この人が劇中にいると逆に非日常が日常に見えてしまうというマジックが働きます。地に足ついていない浮遊感というか反重力物質?声も2ミリ浮いてます。『暗殺教室』の殺せんせーが、この人の場合、素でできます、フォルム的にも。既に【CG+二宮和也の声】で実写化されていますが、究極完全実写化は是非彼で。

 

上野樹里 「どーかしてるよー、こんなあいさつー」

 

*しつこいですが、ハスキーな声質でハードボイルドな感じなのにこの語尾の絶妙な長さが温かいんですよね。関西出身ならではです。そのまま言うとただの嫌味ですから、ぶっきらぼうに聞こえると愛情が感じられなくなってしまいますが、これはプロポーズ後の最初の会話ですから、実はラブラブでなくてはなりません。でも甘ったるくやるわけにもいかない。そういう二人ではないので。その微妙なさじ加減をこの語尾でやってるのです。そして、たぶんあれだけが正解。他は変に聞こえると思います。

 

香取慎吾 「おれもそう思う」

 

*対照的に彼の一個一個の音を平等な強さでゆっくりと丁寧に発音する感じが、上野樹里の一見ぶっきらぼうさといい組み合わせでした。耳の心地よさもそうですが、そういう会話が二人の関係性そのもので、それぞれが間違いなく言いそうなセリフを積み重ねながら、ちゃんと愛情が深まっていくのを描くって、すごいことだと思います。役者さんたちの気持ち良さが画面を通して伝わってきました。

 

ということで、「僭越ながら」を最終回に持ってきたということは、つまり、家族なんだから、差し出がましくていいじゃないか、というメッセージで、西田敏行、不在ながら、そんなこと言ってそうな声が聞こえる感じ。さすがの存在感でした。

 

なんかちょっと関係ありそうな、なさそうなビデオを最後に。「さみしい時はいつでもノックしなよ」って上野樹里が言いそうだなってことで。

 

www.youtube.com