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Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

綾瀬はるかの『わたしを離さないで』は何だったんだ!と思ったらこの映画を見るしかない

綾瀬はるか×ノーベル文学賞有力候補カズオ・イシグロ」の肝煎りで始まった『わたしを離さないで』、視聴者には見事に離されましたね。その謎を追うべく英語の原作を読み始めていたのですが、一人称で、とにかく世界が狭い。主人公の目を通して見た世界でしかないので、日記みたい。というか手記?違う、回想っていうのか。告白小説?悪いことしたわけじゃないか。誰に語っているのかわからない。カフカの『変身』は三人称で書かれているのに一人称の印象しかないのに、世界が反転するような感じとは比べるべくもないなと途中で挫折したまんま、ドラマが終わってしまったので録ったまま何年も見てなかった映画版を見てみました。

 

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舞台がイギリスなので寄宿学校という設定は違和感なく、先進医療で管理されていたり、将来最期までの世話をする介護人になるのに備えて介護の授業があったり、性の芽生えみたいなのも描かれていて丁寧な出だし。

 

ドラマはこの辺の将来への伏線をすっとばしちゃっているけど、三浦春馬はかなり演技の参考にしたことがうかがえるという微妙な距離感。重要なシーンの身振りがまるで同じだったりする。

 

映画は子役と成長後で、主人公を除くあとの二人が似ても似つかない。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のあと、『イミテーション・ゲーム』で演技派女優として高評価されるまで運気の下り坂に入っていたキーラ・ナイトレイと『アメージング・スパイダーマン」に抜擢される前のアンドリュー・ガーフィールド。ターザン新作のヒロインの若いころを演じるエラ・パーネルの柔らかい曲線の美少女はどう転んでも角ばったキーラ・ナイトレイにはならない。クローン以前にDNAはどうなってるのかという疑問が湧いてしまう。

 

その一方で、映画の子役とドラマの子役は、そこまで似せる必要があるのかというぐらいに似ている。が、大事なところは主人公が美人ではないということであって、だからおませな親友に男をとられる設定が、綾瀬はるかが綺麗すぎて性的魅力も勝っており何だかよくわからなくなってしまっている。子供時代の親友は、少なくとも子供時代はすごい美少女でなくてはならず、逆に大人になると美少女にありがちな感じですこしくたびれなくてはならず、逆に主人公は一貫して冴えない地味な感じでないといけない。

 

おススメのキャストはこちら。

 

キャシー:貫地谷しほり

トミー:満島真之介

ルース:栗山千明

 

猶予の秘密を聞きたがるコテージの先輩カップル

オダギリジョー黒木華

 

校長先生:草刈民代

マダム:吉田羊

 

これはこれで豪華ですね。脇が。

 

さて、キャストはこのへんにして、話の設定に戻ると、生徒たちに絵を描かせるのがクローンに魂があるのかを調べるためと説明されるが(映画とドラマでは。原作はそこまで読んでない)、そもそもクローンに魂が宿るのかどうかという話自体がおかしい。そりゃ人間なんだから宿るだろう。あるいは心身ともに健康に育った臓器が欲しいということか?モーツァルトを聞かせた豚の肉のほうがおいしいとかそういう話か?だとしたらかなりエグイけど、はっきりそうとも言ってない。

 

まして、絵は魂とかなんとかに関係なく音痴と一緒で下手なものは下手だというだけで、知性を見るなら文章を書かせるべきで幼稚園のお受験じゃないんだから。その辺がカズオ・イシグロは元脚本家でもあるし最初から映像化を意識したんじゃないかと疑いたくもなるが、映画はアウトサイダーアートみたいに個性的でタマシイレボリューションか!と失笑できるが、ドラマは上手な漫画家の卵みたいな絵で、タマシイとかは感じないし、必死さも伝わらない。下手でなければいけないのに。

 

クローンならオリジナルは「母」ではなく「もうひとりの自分」なので、オリジナル探しが母をたずねる旅になっているのもおかしい。オリジナルを探したら自分とそっくりなのが見つかるはずで、そうなると、オリジナルとクローンで人間としての尊厳の扱いが違うのはなぜなんだという疑問も自然だ。適合しやすさからすると、赤の他人に提供されるより、自分のクローンの臓器で古くなった自分の臓器を入れ替えればよく、別に社会的に差別されているような境遇の人間のクローンを使わなくてもいいはずなので、そこに階級社会の問題意識が脇から忍び込んでしまっている。そこがイギリスらしさか。

 

それなら『ガタカ』。

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あるいは『オデッセイ』のマット・デイモンの『エリジウム』。

 

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この二つは、オリジナルじゃない自分がバレないかがサスペンスになっていて、物語を引っ張る。ドラマでは校長もクローンらしいという話を出すだけ出してほったらかし。最近謎を謎のままほったらかすか、続編制作のネタにするパターンが多いが、SFをちゃんと愛する人達はそういうことはしないはず。SFのつもりがそもそもないのか。

 

あるいは、ジャスティン・ティンバレークだからってなめてはいけない「TIME/タイム』。監督、『ガタカ』と同じだから似たような話。

 

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あと、映画版が最後に付け足した、普通の人間だっていつ「お迎え」が来るのかわからないということではドナーと何ら変わらないというシーンは、この映画からの影響でしょう、『ブレードランナー』。

 

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そういうことでいえば、『わたしを離さないで』の監督、マーク・ロマネクはMV界のカリスマで、SF感覚はハンパない。

 

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映画でも目立ったクールビューティーなおばさん顔とか、建築とか、カセットテープ(回るもの)への偏愛がここにも見て取れる。

 

クローンっぽいものへの興味はこっちか。かっこいいよこれ。マイケル、まだ生きてるのかもしれないと思っちゃう。

 

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マーク・ロマネクはしかしSFの世界にとどまらない。これもそうだったのね。この幅広さはなんなんだ?

 

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一方、『わたしを離さないで』の脚本家、アレックス・ガーランドは、今年のアカデミー賞で視覚効果賞に輝いた『エクス・マキナ』の監督・脚本を務めるなど、順調に出世階段を上っている。

 

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この映画に出演しているソノヤ・ミズノさんも日本生まれのイギリス育ち。「も」というのはもちろんカズオ・イシグロと同じという意味です。カズオ・イシグロを「日本人」だと思っている人たちが結構いますが、違いますから。ついでに言っておくと。

 

マーク・ロマネク監督ではありませんが、ケミカル・ブラザーズ・フィーチャリング・ベックという豪華なタッグのMVに主演しています。バレエ団で活動もしていたバレリーナでもある。何だか内臓が見えるあたりが『わたしを離さないで』を彷彿とさせますね。映像はすごいが、CGとの合成のため制限があったとは思うけどダンスは「?」。というか、土屋太鳳のダンスがいかにすごかったかわかるでしょ?わかってもらえます?

 

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ということで、最後は話が逸れましたが、映画版の『わたしを離さないで』のキャストもスタッフも、そのあと反省してステップアップしていってるし、時代はどんどん先に進んでいるのに、わが日本のTBSのドラマはというと、カズオ・イシグロがもしかしたら村上春樹よりも先にノーベル賞をとるんじゃないかというところから綾瀬はるかも組み込んで今のうちにコネを作っておこうというよこしまな気持ちが見え隠れするのは仕方ないとしても、そもそものオリジナルの曖昧さをカバーとしたのかどうかわかりませんが、子ども時代を引き延ばし過ぎたうえに、学生運動もどきのエピソードが入り込んだり、主人公が好感度女王綾瀬はるかなのに誰とでも寝る女という微妙な設定になってしまったりと、視聴者の生理を考えずに突っ走ってしまった感じで、社会が暴走し始めた時の手のつけようのなさを映すようでもあり、そういうことを全部含めると結果的には閉鎖的な社会の怖さを描けてはいる。できればドラマのなかでやっていただきたい。

 

あと、「わたしを離さないで」を二回も言っちゃだめだと思いますけどね。それ、ドラマのタイトルですから。せめて一回じゃないですか。