Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

雪と氷のドームに生まれしものたち

もはや使われなくなった言語が人工的に保存されている未来社会。

冷凍保存されていたかのような言語を解凍しようというプロジェクトが動き出した。

言語的に無垢なこどもたちを揃えて、死に絶えた言語を吸収学習させようというのだ。

しかし、

かつての寒冷地の言語は、温暖化が進んだ地球では使いものにならず、そうしたことばを無理やり覚えこまされたこどもたちは混乱をきたした。

数えきれないくらいの雪や氷、吹雪の種類を語り分けるための語彙が、どこまでも砂漠が広がるこの世界で一体何の役に立つというのだろう。

 

そこで、人工的にかつての北極やアラスカ、シベリアを模した、一国に匹敵する規模の広大なドームが作られた。

寒冷地の言語を覚えさせたこどもたちをそこに送り込み、遺伝子操作で何とか絶滅を防いでいたホッキョクグマやアザラシ、トナカイなどの動物と共存させることにした。

 

数十年後。

実験結果を調べようと何度も研究チームが送り込まれたのだが、人工的とはいえ余りに厳しい環境のなか、これまで誰一人として生還していない。

一方で、こどもたちはその『ことば』に込められた知恵と力をもって生き延びていた。

 

そのドームはいつしか「スノードーム」と呼ばれるようになった。

それは、一つの新たな世界。

ことばとは、生きるちからそのものなのだ。

 

数千年後。

太陽の活動が急変、地球は一気に寒冷化し、一面が雪と氷の世界となった。

都市機能は壊滅、農業は成り立たず、食糧難から多国間戦争や内戦が頻発し、政治体制も崩壊。人工知能に支配された金融ネットワークだけが自らを存続させることのみを目的に暴走を続けている。

 

そして。ある日

スノードームが轟音と共に崩れ落ちた。

スノードームを爆破し、雪に包まれた世界へと散り散りに走り去っていったのは、その「ことば」を受け継いだものたち。

彼らが歩む白金の大地、紗雪を掬うその掌から零れ落ちる氷の餉餉らは、微弱しい曙光を透過させてさえ雲羅綺英とした祖粒子を勃起せていた。