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Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

女優がブレイクするために演じるべきは無表情な人間かアンドロイドか?

映画やドラマ、読書、音楽、デザインとか

タイトルにある問題を、以下に具体例をとりながら考察する。

 

綾瀬はるか

製作委員会にTBSも入っていた韓国映画「僕の彼女はサイボーグ」(2008)で無謀にも女ターミネーターを演じる。翌年、真っ直ぐすぎる棒読みが光る橘咲役のTBS「仁」(2009年)で大ブレイク。同じタイムスリップものである点も興味深い。

 

前田敦子

日テレ「Q10」(2010)のロボット役で最後まで無表情・棒読みを貫く。翌年、「もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(2011)でとにかく映画初主演、「苦役列車」(2012)でいきなり女優開眼。

 

この二人の例からわかることは、無表情な機械を演じた後、ちゃんとしゃべる人間の女の子を演じると、ギャップがある分、好感度が余計にアップして、うまくいけば翌年ブレイクするということである。

 

しかし、これは前年に(ここが重要なポイント)、未来から来たロボット、あるいはアンドロイドを演じた場合であって、極端に無表情な人間を演じてしまうと、逆にその後、普通に明るい人間を演じるのが難しくなる。その例が言わずと知れた、無表情で台詞もほとんどない「家政婦のミタ」(2011)を演じた松嶋奈々子である。直後のフジテレビ「ラッキーセブン」(2012)で演じた探偵事務所の所長役は、ミタさん以上に人間味がなかった。いまのところ様々な事情からギリギリ踏みとどまっているようではあるが、もし「家政婦のミタ」の続編が実現すれば、彼女のキャリアにとって最後の一撃となるかもしれない。

 

この『無表情な人間』の不吉なジンクスに挑んでいるのが、フジテレビ「デート ~恋とはこんなものかしら~」(2015)で今のところ鏡を見て予行演習をするときあるいは楽しいデートの証拠写真を撮るときのフェイクスマイル以外は完璧に無表情な月9らしからぬヒロインを演じている杏である。とはいえおそらく最後まで無表情を貫き通すことはなく、徐々に人間らしさを見せていくはずである。妖怪なのに人間よりも人間らしい妖怪人間ベラと同じように。人間を演じてもどこか人間離れしてみえてしまう杏は規格外であり、このジンクスを打ち破れるとすれば現状彼女しかいない。このドラマがコメディーであることもプラスに働くだろう。さらにもう一つのプラス要因は、相手役が長谷川博己だということである。

 

家政婦のミタ」でも相手役を務めた長谷川博己は無表情な相手を全く苦にしないという点でこの問題を検証する上での最重要人物である。およそ父親の自覚のない父親、あるいはフラッシュモブも厭わない自称高等遊民という相手の表情など気にもかけないクズのような自意識の塊を演じさせたら右に出るものがない。例えば相手を必要以上に罵倒あるいはリベンジするのを得意とする堺雅人では無表情な相手とバランスを保つだけの内向性に欠けるため、相手役には表情を必要とするのだ。

 

そんな知ってか知らぬか結果的に名バイプレーヤーの長谷川博己がかわいいチェックのネクタイをしながら「それはSF映画のような体験だった」と安っぽくつぶやくサラリーマンを演じるダイハツ・ムーヴのCMで「トリセツ」をするアンドロイド、小松菜奈の行く末が気になる。中島哲也監督のいつものように問題作「渇き。」(2014)では役所広司の愛する「バケモノ」な娘だった。無表情な女優を救う神、長谷川博己とのCMとは言えかなりヘビーローテーションな共演が来年どのように作用するのか。注目は今年公開予定の「パクマン。」ではなく、その次、あるいはその次の次のブレイクポイントである。

 

さて問題は、鳴り物入りの割に見事に迷走し、すでに忘れ去られたキムタク主演の「安堂ロイド」(2013)の扱いである。

 

劇中一度死んだのにわざわざ復活させられる本田翼は「アオハライド」(2014)がヒットしたが、アンドロイドでも女子高生でもキャラはほとんど変わらないのだ。そもそもアンドロイド顔ではないことも含め、常識外れである。どうしてくれるのだ?

 

絵に描いたようなアンドロイド顔の桐谷美玲はそのまま正統派のアンドロイドを演じたにも関わらず、まだ本格的にブレイクしているとは言えないまま、「死神くん」「地獄先生ぬ~べ~」と異界ものづくし、今年もヴァンパイア役がスタンバイ。杏のように早く人間になりたいといったところだが、文字通り今年公開予定の映画「ヒロイン失格」とならないように願いたいものだ。「安堂ロイド」を踏み台にブレイクできなかった原因が、①あまりにはまりすぎた、②ベラベラしゃべりすぎて無表情さを欠いた、③そもそもヒロインではなかった、このうちのどれが原因なのかについては今後検証を進めたい。

 

また、「安堂ロイド」では、見事なアンドロイド顔であるにもかかわらず、わざわざ人間のヒロインを演じた柴咲コウは、日テレ「○○妻」(2015)で、表情は若干あるものの目が笑っていないアンドロイドのような契約妻を演じている。「家政婦のミタ」のその後を知りながら同じ脚本家で何を狙うのかは不明である。まさか実はアンドロイドであるというオチはないだろう。せめて幽霊か。

 

ところで、当の「安堂ロイド」は映画化を匂わせるような終わり方をしたが、上記のとおり常識外れな設定が多く、この問題の理論検証が難しくなるので映画化は勘弁願いたい。まさかないとは思うが。

 

ちなみに、当然アンドロイドだったキムタク自身が、翌年の「HERO2」(2014)で大復活を遂げている。当たり役の中でも最も人間臭い久利生検事役でだ。コケることも承知のうえで正方向のリバウンドを狙ってのアンドロイド役か?本来は女優のための法則を器用に使いこなすあたり、さすが抜け目ない。