「ほんとにあなたなの?」
彼女が聞く。
「そうだよ、ぼくだよ」
彼女は目が見えない。
「あなたのように聞こえるわ」
今日の彼女はいつもと違う。
「ほんとにあなたなら言って。あなたがわたしを愛している理由を」
ぼくが彼女を愛している理由を僕は彼女に伝えたことは一度もない。
「言えないのね。じゃあ、やっぱりあなたね」
僕にも彼女が本当に彼女なのかわからない。
「君のように聞こえるけど、本当に君なの?」
僕も目が見えない。
「ほんとに君なら言えるはずだよね。君がぼくを愛している理由を」
彼女は本当は僕のことを愛してはいない。
「言えないんだな。じゃあ、やっぱり君だ」