≪過去形≫ 終わったものは終わった
・最高にくだらない恋を意外とそんなにくだらなくもないわと自己暗示にかけるがやっぱり大したことなかったわと言って終わってみればさっぱりするパターン
・年甲斐もない、あるいは背伸びしすぎの、または身分不相応の素敵な恋がいかにあっけなく終わるかという当たり前の話をあえてまわりくどく描くパターン
・最高に幸せだった恋愛に限って相手があっけなく死んで終わることの理不尽さってどうなのよという古典的なテーマを蒸し返して語らずにはいられないパターン
・ちょっとした誤解でも一度終わりそうになったら最後、更なる誤解の連鎖反応であれよあれよという間に引き裂かれて最後に悲劇の主人公気分を満喫するパターン
・飽きちゃって自分で壊したのにぐだぐだ言い訳しながら相手をズタズタにするデスメタル風でばっちりきめるパターン
≪過去完了形≫ その時点には終わってたから
・不倫のあるいは複数股の恋の言い訳の果てになぜだか相手が納得してなんだかわからないけど何らかのわだかまりが解けて一歩前に歩み出すパターン
・相手が納得しないパターンはあたりまえすぎて話にならない
・不倫が1時間以上続く場合、あるいは本の半分をこえてもまだ終わっていない場合は、そのあと必ず修羅場になるので、見たくない観客は席を立ったほうがよいし、読みたくない読者は残りページを接着剤で固めるべし
≪過去進行形 ≫ あくまでその時点においては、
・永遠に続くはずだった幸せな時間の行方が描かれるが、その高尚さのわりに結末はどうでもよく、わりと曖昧なままか、適当な終わり方で突然ぶちっと切れるパターン
・その時点においてはそういう感じが続いてたということをわざわざ言うということは、つまりそのあとはその状態は変わってしまうということを暗に示しているあって、ちゃんとお断りしているのだから映画でも製造者責任は問われないので、むかつくからといって安易に訴えないほうが賢明である
≪現在形 ≫ いまは、少なくとも
・ふとしたきっかけから不思議と続いちゃってる恋がまだ終わらないという状態の気分を描きたいだけなので特に何も起こらないけれど現実はそんなものなので青春の恋愛ものに何が描かれているのか知っているのはその時代を過ぎた世代なのだけれど結局ばかばかしくて付き合ってはいられないので結局恋愛が何かは知らないくせに恋愛ってそんなもんよねと知ったかぶりをしたい世代がそういうものを好むので語り口はひらがなというパターン
≪現在進行形≫ いましてるところ。うるさい
・濃密な時間だけに限定すれば何でもあり
・漢字を多めにして、言葉遣いか、文体か、筋書きか、編集か、音楽か、声か、演技か、表情か、表紙か、ポスターか、とにかく何でも構わないので、いくらなんでも乱暴じゃないのというくらいにただ激しければそれなりに格好がつくが作ってる方は無自覚なのでやっぱり金返せ
≪現在完了形≫ よくも悪くも経験として
・大人の恋もしたわ、それから無茶なセックスもという声がどこからか聞こえてきそうなパターン
・その場合はあとで後悔を伴わないといけない。悪いと思うことと後悔とは少し違うし、食後にコーヒーを飲みたくならないような食事はあえてする価値もないのだ。
≪未来形≫ いつかはそのつもりだし!
・どんな映画も小説もあなたの未来は描けないわけだから未来の恋愛だけは自分自身で書きなさいというメッセージを伝えるためには内容的には非現実的であればあるほどすばらしく、いつかあなたを振り向かせてみせると自分を思い込ませる勇気をくれる相手の見たこともないような素敵な笑顔や台詞がラストに一瞬あればあとはかなりどうでもいいと開き直るパターン
・こんなのを一人で見たり読んだりしている輩にだけはスイートな未来は永遠に来ないし本人たちもそのことにも気づいてはいるけれどそんな残酷な時間の零れ落ち方もまだ若くして抜け始めた髪のように痛みは伴わないし意外に人生というものは人に優しくありたいと思っているのかもしれない