Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

絶筆を受け継ぐものと、受け継がぬもの

その万年筆には作家の魂が宿っていた。

絶筆となった作品は、誰かがそれを手に持ち、紙に筆先を当てさえすれば、自然と残りの物語が紡がれたかもしれない。

しかし、その機会は既に失われている。

この世界から紙が姿を消したからだ。

 

いま万年筆は博物館のガラスケースの中で多くの人々の視線を集めている。

絶筆はといえば、人工知能が分析結果の精度と深度を競うように、独自の完成版を披露している。

そうかもしれない。ただ、決してそうではないと確信できるもの。

魂を込めて握りしめたものにしか宿らないものがあることを私たちは知っている。

 

そして。

歴史など誰も振り返らず、未来の予測にしか興味を示さず、博物館など訪れなくなる日が訪れる。

朽ち果てたその博物館で、瓦礫に埋もれた万年筆と、あわせて展示されていた色の褪せた便箋を、輝く瞳の一人の少年が手にした時、空の彼方から見つめる作家の魂が久しい時の果てに震えた。

しかし、残り少ないインクがすぐに尽きた。

それが本当に最後の一頁となった。

完成されえなかったものはいつまでも未完成であるべきであり、

それこそが人生であるとでも言うかのように。