Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

記憶整理人の佐藤権之助と申します。

私の頭の中には記憶の整理人がいて、私が寝ている間に仕事に励んでいる。

『夢を見る』という行為は「ゴミ箱に捨てちゃってもいいですかね?」という記憶整理人からの確認作業である。

その記憶整理人、名前は佐藤権之助というのだが、かなり重篤な病気で闘病生活に入ってしまった。

 

さて。

 

その長い闘病生活から復活した佐藤権之助は、記憶整理人としての活動を再開したのだが、闘病生活が随分と長かったので、私は年老いてしまい、すぐそこにまで死期が迫っている。

佐藤権之助の闘病中はというと、記憶の整理が全く行われないものだから困った。

記憶の整理が行われないと何から何まで忘れらないのかと思ったら、まるで逆で、全部忘れるのである。

周囲は若年性痴呆症ではないかと疑ったものだが、断固としてそうではない。

かといって佐藤権之助が・・・と申し開いたところでそうそう理解されるはずもなく諦めていた。

そんなところに佐藤権之助が突然復活し、数十年分のロスを取り戻そうといきなりフル稼働で記憶を整理し始めたのだ。

そうすると、理解可能なフォーマットで記憶がスムーズに定着し始め、「なるほど私の人生はこういう人生だったのか・・・」と感心しきりの毎日。

 

今日は3歳の孫娘が来ている。

 

「おじいちゃんの思い出がそこにいるよ」

「どこに?」

「えーっとね、もう、たべちゃった」

「そうか、食べちゃったかあ。何でも口に入れちゃう頃だもんね、仕方ないね」

 

しかしそれは仕方ないでは済まない。なぜなら孫が口にしたのは佐藤権之助に違いないからだ。

 

まんまと孫の体内に入り込んだ佐藤権之助は、孫自身の記憶整理人である浅生智也を監禁し、彼女の頭のなかの奥まったところにある小部屋に閉じ込めたのだバタン!・・・そして静寂。

「まさかお前、私の生きている間にはとても終わりそうにない私の記憶の整理作業を孫の中でやり続けるつもりなのか!」

もしそんなことでもされてしまえば、孫の記憶と私の記憶が入り乱れて恐ろしいことになってしまう。可愛らしい孫娘が世にも数奇な運命を辿ってしまう。それだけは何としても防がねばという思いに駆られ、孫の瞳の中に佐藤権之助の影が見えないかと必死にのぞきこみながら渾身の迫力で怒鳴りつけてやったのだが、孫娘の母親がすっ飛んできて、どこかに連れ去ってしまった。

ああこれで私はもう二度と、運が良ければ臨終のときまで、孫娘に会うことはないだろう。

「覚えておけよ、佐藤権之助!いつか仕返ししてやるぞ」と心の中で叫んだものの、それはまさに負け犬の遠吠えというものだ。

たぶん私はまた、何も覚えておけなくなるのだから。