女は男に弄ばれ、無造作に捨てられた。
女は最期に言った。
「生まれ変わって復讐してやるわ。このうえなく残酷な方法で」
女は生まれ変わってかわいい男の子を生んだ。
女は男の子をこのうえない愛情で包み込んだ。
かつて恋人であった時よりもはるかに深い愛情をもって。
子どもを産むためだけにつきあった父親とはすぐに別れ、
その男の子には他の誰にも手を触れさせなかった。
男の子は穢れを知らぬ、純粋な、天使のような笑顔を浮かべた。
母親だけに向けて。
男の子は成人となったいまも、
母親からの愛情以外のいかなる感情も知らない。
怒りも、苦しさも、悲しさも、切なさも。
そして母親は、突然にこの世を去った。
しかし、息子は、そのことに何の感情も抱くことができなかった。
そしてその後の長く孤独な人生において、
もはや決して注がれることのない母親からの愛情を、
枯れかけの観葉植物のように、ただひたすらに待ち続けた。