妻と話していて、わかるんです。
妻は、ここにはいないのです。
話しかけると反応はあります。
でも、心、ここにあらず。
いや、その表現も少し違うのかな。
他のことに気をとられていて、集中できないというわけではない。
一時的なものではなく、心の「本体」が、常に、ここにはいない。
微笑んでくれますよ。
素敵に。
でも、その向こうには、何も、見えません。
ファッション誌のグラビアに写る女性のよう。
とでも言えば、わかっていただけるのでしょうか。
3年以上生死が不明というわけでもないし、
強度の精神病というわけでもなく、
まして不貞行為があったわけでもない。
しかし、もはや親近感も、
まして愛情に類するものはほとんど見えません。
何がいったい婚姻関係を継続させるために必要なのか、
わたしには分かりません。
ただ、彼女の心がここではなくどこか別の場所にいることを、
私は証明することができないのです。
先生、この状態でも離婚は成立するのでしょうか。
あるいは私は、既にこの世に生きてはいなくて、
彼女がかつて愛した人間の思い出として、
額縁の中に飾られている写真に過ぎないのでしょうか。