Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

真実の愛に辿り着くまで披露宴に流れるビデオ

披露宴が始まった。

(ホールにはベートーベンのピアノソナタ31番が流れる)

左側に新郎の友人・知人たち、右側に新婦の友人・知人たちが20人ずつ並ぶ。

あとは親族。子どもはいない。

お決まりの取り繕った挨拶もそこそこに、

ホール手前奥に用意されたスクリーンにビデオが映し出される。

映像的にも凝った作りで、プロの仕事であることは明らか。

上映時間の案内はない。R18というマークが出て、少しだけ笑いが漏れる。

新郎新婦の馴れ初めは良しとして、二人の生い立ちも特記すべきことはなく、

でも恋愛遍歴に入り始めてから空気が変わる。

出席者それぞれと新郎、新婦との秘めた関係が詳細かつ赤裸々に語られていくのだ。

「撮ってたの?」「いつの間に?」「こんなの出していいの?」という声がちらほらと。

新郎新婦は微笑みを浮かべ、時に見つめ合う。どうやら楽しんでいるようだ。

 

5時間が経ってもまだ終わらない。

新婦:だって二人が多くの困難と障害を乗り越えて真実の愛に辿り着くまでの物語なのよ。

それをわかっていただくには全てを語るしかないの。あなたはわかるわよね?

新郎:もちろんだよ。僕だって同じさ。

(音楽はいつのまにかラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番ハ短調に)

わたしと彼との恋愛はどんなふうに語られるのかしら。

わたしの頭の中にはさっきからずっと妄想が渦巻いていて、興奮が抑えきれない。

たぶんそれは少し性的なものだけど。

全員がそんな気持ちなのかしら。

 

だから披露宴のクライマックスのことを語るのは少し野暮というものね。

 

ただ、ひとつ付け加えておくと、

この披露宴に招かれた男女40人の相関関係は、そのあと、さらに複雑になってる。

何らかの達成感を分かち合った男女はつながり合うし、

つながりが重なれば、絡み合い、もつれ合う。

そして結果的に結婚という暴挙に及ぶ二人がいれば、また性懲りもなく同じように披露宴が開かれるの。

さらにややこしくなってしまった関係性を語るためにビデオはますます長くなっていくし、

当然じらされる時間も長くなって、その分興奮も高まっていっちゃう。