Wakeupalicedear!

Shortest stories

A Perfect Circle


一匹の猿がすくっと立った。

そして、360°回転した。

尻尾が大地に円を描いた。

猿はその円を見つめた。

 

そして人となった。

 

一人の男が大理石を削り、

人間の姿を作り出していた。

究極の姿を求めていくにつれて

形はますます失われ、

円球となった。

男は見つめたまま、動かなかった。

何を作ろうとしたのだろう。

 

一人の男が筆をとり、

紙の上に円を描いていた。

書けば書くほど円は形を崩していく。

やがて一本の線となっていた。

円を描こうとしていたのではなかったか。

 

一人の男が機械を使い、

完全に精密な金属球を作ろうとしていた。

しかし、精密さを求めれば求めるほど、

なぜか見た目には完全な円球ではないような気がしてしまう。

男にはなぜだかわからなかった。

 

元は猿だった男は、いまも果てしなく転生を繰り返し、

完全な円を生み出そうとしている。

 

この世に完全なものがあるのかと問いかけることに、

意味などないのだとしても、

人間を作ってきたのは、そういうものなのだとすれば。