Wakeupalicedear!

Shortest stories

ありがちな遅刻の言い訳

全部、虚構ということさ。お金も、法律も、宗教も、ネットも、全部がつくりもの。かたちのないもの。あるということにしているだけの約束事。みんなで生きているんだという幻想を支えるための道具。見えるものも、聞こえるものも全て、言葉さえも。

石を手に取り、握りしめる。この重みと、冷たさ。しかし、それさえも、自分がそう感じているだけのことで、ほんとうはそうじゃないかもしれないけれど、われわれは何ら確かめる術を持たされていない。

 暗闇のなかで目を覚まし、眠りの中にいたときと、何が変わるのかを考えたところで、何が裏で、何が表か分かるはずもなく、裸なのか、服を着ているのか、服を着ていても、それは外側から見ればの話であって、やはり裸なのに変わりはないんじゃないかと思えば、服を着たところで意味などない。

そのまま風呂に入り、水の中に身を浸せば、どこまでが体なのかの境界線も溶けてしまい、存在の核というようなものはないままに宙に浮く。

さらに。

皮膚から深く浸み込むようなセックスもまた、冷え固まった皮膜を滲ませ合うだけの、儚げな虚構。石とは違う温かみに慰められるだけの。

この存在の核のようなものを探しながら、限られた時間を様々な虚構に売り払いながら、何も見つからないまま、気がつくと、永遠に覚めることのない眠りの中で、それを見つけることになる。

明日もまた、死なずに生きていることとと、同じことだ。われわれには、何の自由も許されていない。

くだらなさすぎて、やってられない。

そんなことを考えてたら、ベッドから抜け出せずに遅刻した。先生に怒られて、理由を言えと言われたけど、言ったところでどうせわかってはもらえないから、言わない。