読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Wakeupalicedear!

最近はほとんどドラマの感想なんだけど、ほんとは短い小説を書くためなんだけど。

どうでもいい記憶の使い道

「最近、どうも頭の回転が鈍ってるような気がしてね・・・」
「あなたぐらいの歳になると、そんなに珍しいことではありません。すっきり直して差し上げます」
「それは嬉しいな。で、どうやって?」
「余分な記憶と知識を消します。現在のお客様の生活は精密に分析させていただいてありますので、何が不要かは簡単に分かります」
「それは困るな。あれ・・・何を消されたら困るんだっけな?」
「大丈夫です。失礼ながら、お話の途中でもう消させていただきました」
「ひどいな。消した記憶はどうなるんだ?」
「保存してあります。希望者があれば売ります。売れなければそのままスクラップです」
「私のどうでもいい記憶の残滓を買いたい他人がいるのかね」
「あまりいませんね。だいたい元の持ち主が買い取られます。『どうでもいい記憶なんだが、それでも愛おしくてね』、とおっしゃるお客様が意外と多いもので。でもどうでもいい記憶なんて、買い戻しても、やっぱり思い出すことはないんじゃないでしょうか。不思議ですよね」
「どうやら、まだ人間のことがわかっていないようだね。私だってまだ死んでいないけれど、人が死ぬときは、記憶の底から浮かんだどうでもいい記憶に限って思い出してしまうものなんだよ。不幸にも、人間というものは、最も幸せな記憶とともには死ねないようになっているんだ」
「なぜでしょうか?」
「死ぬことを許されていない神の嫉妬なのかもな」