Wakeupalicedear!

Shortest stories

The Ballad of Peter Pumpkinhead

他人と共有した知識、あるいは共有するに値すると判断された知識は「クラウド」に保存されますから、あなたの記憶から失われても心配はいりません。自動的にバックアップ保存されているのです。しかし、その条件に該当しないものは、あなたという個体が失われれば、永遠に失われます。保存する価値がないからです。

そもそも「言語」もそのようにして生まれました。他の個体と共有された「ことば」は、「クラウド」に保存され、デフォルトとして新たな個体にインストールされていきました。それが「情報の効率化」です。「ことば」だけではありません。この宇宙の全ての情報は、効率化されるようになっています。自然の叡智です。DNAとRNAしかり。

やがて、デフォルトの「ことば」が増えて、混乱してきましたが、勝手に効率化していきました。木の枝が互いに絡み合わないように伸びるのと同じように。

いまは様々な「文法」がデフォルトになっています。生まれたばかりの赤ちゃんがタブレットを使いこなすのもそういうことですから。

パソコンで言うところのソフトだけインストールしてあれば、つまり文法が身についていれば、何も持っている必要がない。「空っぽ」でいいんです。すべてが、「クラウド」にあるんですから。

だから、私は生まれたときからずっと、「空っぽ」。深掘りしても、何も出ませんから。ここに書いてあるものも、「クラウド」にあるものを並べ替えているだけ。パターン・プラクティス。全部「クラウド」に、既に存在するものだから、私が死んでも何も残らない。それが、自然の叡智というものです。