Wakeupalicedear!

Shortest stories

父のように

前々からうっすら気付いてはいたんです。
年々、気味の悪いくらいに似てきていると。
私の父に。
私の父は50になる年に、胃がんで亡くなりました。
随分と苦しみました。
私は父のことを可哀想だと思うよりも少し前に、
こう思いました。
「あんなふうには死にたくない」と。
父は死に間際に言いました。
「死にたくない」と。
それが結局こうなんです。
もう見分けがつきません。
例えば十年前の私は全然こんなふうではなかった。
私は私だった。
美しかった母の面影も確かに残していたのです。
法事の度に誰だかわからない親戚にも言われたものです。
いまでは自分でも見分けがつかなくなってきているのです。
遺影の中の父の写真と。
いやそれだけでなかった。アルバムの中の写真にまでも。
遺伝子というものでしょうか。
私はもはや自分が自分であるという自覚さえなくなり、
私は父のそのままであるのではないのかという不安にとらわれ
そして私はもうすぐ50になろうとしているのです。
しかしもっと恐ろしいことは、私が50を過ぎた後に待っていました。
私の年齢と日数は父の亡くなった年齢と日数をこえているのです。