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Shortest stories

蔵書分配

 

二人は本が好きな夫婦だった。
本屋さんにもよく一緒に行った。
たくさん本を買い込み過ぎて、
マンションの部屋から溢れたので、
郊外に一軒家を建て、
蔵書を納めるための部屋を作って、
大きな本棚に二人の本を並べた。
二人とも同じ本を持っていて、
だけど、どっちも見つからなくて、
またもう一冊買ったりもした。
三冊並んでいる本があるのはそういうわけだ。
気が合う夫婦でもケンカはする。
そんなとき、一言も話さなくても、
棚に増えた本を見れば、
相手が何を考えているか、大体分かる。
やっぱりそれでも同じことを考えてるんだ、
と感心したりもした。
黙ってちょっと立ち読みしたりもした。
そんなふうに相手のこころの中にあるものも、
立ち読みできたらいいのに、とおもったりもした。
結局二人は別れることになったけれど、
どっちのものかわからない本も多くて、
整理しなきゃいけないというのに、
なかなか手がつけられない。
別れた夫婦の思い出というものは、
案外そんなものかもしれない。
もしかしたら、愛情も。