Wakeupalicedear!

Shortest stories

読み聞かせたいお話

お腹の赤ちゃんにいつも読み聞かせをしていました。
亡くなった母に私がいつも読み聞かせてもらっていた絵本です。
毎日、毎日、来る日も来る日も。
その子が喜んでいる気がしたものですから。
でもその子はこの世に生れ出ることはありませんでした。
ごめんなさい。
わたしはその絵本を捨てました。
古本屋さんに売るのでもなく、ゴミとして捨てました。
いつまでも持っていてはいけない気がしたのです。
その時は。
 
時がたって、心の傷は少しだけ癒えました。
彼はやさしく私のことを包んでくれました。
妊娠して、今度は無事に生まれてくれました。
その子は読み聞かせが大好きでした。
毎晩、何冊も何冊も、疲れて眠るまで。
 
ある夜、私は疲れて眠りこんでいました。
ふと目を覚ますと、
娘がわたしに読み聞かせをしてくれていたのです。
真っ白なノートを開いて、

そこには書かれていない、あの絵本のお話を。